こんにちは、オートバイのカッコ良さを追求するモトロックマンです。
今回はレース用キャリパーについて。
機能的な話ではなくエンジニアの立場から
マニアックな話を2つほど。
なぜチタン製ピストンを使う?
bremboの市販キャリパーのピストンはアルミ製です。
対してレース用キャリパーはチタン製のピストンです。
アルミの比重は 2.7
チタンの比重は 4.5
同じ体積のときチタンよりアルミのほうが軽いのに
あえて高価で重いチタンを選ぶのはなぜでしょう?
【答え】チタンの熱伝導率が低いから
「熱伝導率が低い」とは・・・ 熱の伝わり方が遅い。
つまり、温まりにくく、冷めにくい➡ チタン
「熱伝導率が高い」 とは・・・ 熱の伝わり方が早い。
つまり、温まりやすく、冷めやすい➡ アルミ
なぜ熱伝導率が低いとピストンに有効?
ブレーキの制動力はディスクとパッドの摩擦力によって生まれます。
従って、熱量を必要とします。
Moto GPで使われるカーボンディスクの場合、
金属ディスクよりもさらに熱がないと効きません。
対して、ブレーキ操作を伝達するフルードは熱を嫌います。
つまり、ディスクとパッドで発生した熱をフルードに伝えないために
熱伝導率の低いチタンをピストンに使うわけです。
各材料の熱伝導率
チタン合金 → 7.5 W/m℃
純チタン → 17 W/m℃
ステンレス → 17 W/m℃
鉄 → 62 W/m℃
アルミ → 120 W/m℃
銅 → 381 W/m℃
チタン合金の7.5に対し、アルミは120。
実に16倍も熱伝導率が違います。
実際にピストンとして使用されている材料は
チタン合金、ステンレス、鉄、アルミがあります。
ステンレスは熱伝導率的には良い数値ですが
”重い” というデメリットがあります。
また、キャリパー本体がアルミなのでステンレスのピストンを使うと
異種金属接触腐食という問題が発生します。
異種金属接触腐食については、
”チタンボルトは大事なバイクを腐食から守る!!” の投稿を見てください。
オマケ:ピストンの流用
同じメーカーで同じピストンサイズなのに材質が異なる
といった場合があります。
この場合、ピストンの互換性があります。
ピストンシールの品番が同じなら交換は可能です。
※交換は自己責任でお願いします。
ただ、ハッキリ言います。
「全く違いは体感できません!」(笑)
アルミとスチールで比較テストしたことがあります。
”熱伝導率と重量の違いによる変化” をテストしましたが
全くわかりませんでした (-_-;)
レーシングキャリパーが幅広の理由
レース用キャリパーは市販のストリート用に比べ厚みがあります。
特に、Moto GPで使われているキャリパーはワイドです。
レース用なら少しでも軽くしたいところ、
なぜ「大きい (分厚い) キャリパー」なのでしょうか?
答えは2つあります。
【答え1】 ディスクが厚い
上の写真を見てわかる通り、レース用のディスクは厚みがあります。
特にMoto GPで使われるカーボンディスクは分厚い!
純正や市販のスチールディスクは厚みが 4.5~5.5mm です。
対して、SBKのレース用はなんと 6.5~7.0mm もあります。
さらにMoto GPになると・・・
スミマセン、具体的な数値忘れました (-_-;)
ちなみにF1のディスクは衝撃の 32mm!!
ディスクが厚くなる分、キャリパーも厚くなるわけです。
【答え2】 シリンダー加工の都合
レース用のキャリパーはモノブロック構造なんです。
つまり1ピースの一体物ということです。
ストリートキャリパーの場合、2ピースで分割タイプなので
ピストンのシリンダー加工は容易です。
材料に対して上から刃物で加工するだけです。
対してモノブロックの場合、
キャリパーの隙間から刃物を入れて加工します。
そのため、ある程度の隙間が必要になるわけです。
余談ですが、
モノブロックでもMOSキャリパーのような場合は簡単。
片側を貫通させてシリンダー加工をし、後からフタをします。
・
・
・
はい、とりあえず今回はここまで。
最後まで見ていただきありがとうございます。
コメント