【かじらない方法】 それは、かじらないボルトを使うこと

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【金属フェチにオススメのチタンボルト】

こんにちは、オートバイのカッコ良さを追求するモトロックマンです。

今回はボルトをかじらせない方法をお伝えいたします。

かじらない方法

ボルトをかじらせない方法は全部で4つ。

① ゆっくり回す
② グリスアップ
③ かじりにくいボルトを使う
④ かじらないボルトを使う

では、順に説明します。

① ゆっくり回す

ボルトの脱着時に、ネジのはめ合いで起こる摩擦によって熱が発生します。

その熱によってネジ山が膨張し、おねじとめねじが溶融 (密着)して動かなくなる。

これが カジリ であり 焼き付き です。

かじりの原因が摩擦であるなら、摩擦がおこらないほどゆっくり回せばイイわけです。

超ゆ~っくり回してもかじりや引っ掛かりが起こるのなら、異物が混入してるかもしれません。

異物の混入もないなら、それはもうネジ山不良ですね。

そんなボルトは迷わずチェンジ!
ネジ穴もタップを切りなおしたほうがイイでしょう。

② グリスアップ

「ゆっくり回す」
自分のバイクだったら、それでOK!

でも、サーキットやショップのメカニックはそういうわけにはいきません。

時間に制限があるなか、ゆっくりボルトを回す余裕はありません。

ではどうするか?
かじり対策用のグリスを使います。

具体的には、スレッドコンパウンドかモリブデングリスを使用します。

グリスアップは完全にかじりを防ぐことができます。

ただし今度は、かじりとは別のこんな問題が起こります👇

・異物混入
・オーバートルク

異物混入の問題

どんなグリスだとしても、多かれ少なかれ粘着性があります。

周囲のホコリや砂がグリスに付着した場合、ネジ穴をキズつけることになります。

そのため、しっかりしたレースチームになるとレース後にボルトの洗浄を行います。

オーバートルクの問題

ボルトの締め付けにおいて最も重要なのは、軸力です。

ねじ山のスプリングバックによってボルトは締結されます。

しかし! トルクレンチは軸力を測定できません。

締め付けた際の摩擦(抵抗)と軸力の合計を計測してます。

でも、グリスを塗ると摩擦(抵抗)が低減してしまいます。

そうなると十分な軸力がかかっているにも関わらず、滑るためにトルクレンチが正確な荷重を判断できません。
結果、オーバートルクになってしまいます。

また、塗る量や塗る場所によっても摩擦の低減率が変わるためトルク管理ができなくなります。

なお、この件に関してはコチラの記事で詳しく解説しております👇
【マニアック】 ボルトのグリスアップについて考える
合わせてお読みください。

③ かじりにくいボルトを使う

かじり対策の3つ目は、カジリにくいボルトを使うこと。

具体的にどんなボルトがイイかと言うと、DLCPVDいった表面処理を施したもの。

なぜこの表面処理がイイかと言うと 「かじり易いボルトの条件」 を対策してるからです。

どんな対策方法なのかのを説明する前に、まずは「かじり易いボルトの条件」 を説明いたします。

・表面硬度が低い
・摩擦系数が高い
・熱伝導率が低い
・膨張幅が大きい

条件は以上の4点。
これに当てはまるものがカジリ易いわけです簡単に説明します。

硬度が低いもの

これはなんとなくわかりますね?
金属ですから硬いほど強くなります。

硬度が低いということは柔らかく、弱く、カジリ易くなります。
ちなみにチタンの硬度は金属のなかでは比較的高いです。

硬度の一覧表は後ほどご紹介します。

摩擦係数が高いもの

数値が高いほど摩擦熱が高くなります。

この表を見て思うのですが、アルミのネジ穴にチタンボルトって摩擦係数的に相性悪いんですね。

熱伝導率が低いもの

熱伝導率が低いほど、熱が伝わりにくくなるわけですが、逆に熱くなった場合は冷めにくくなります。
そのためカジリ易くなるわけです。

これもチタンはよろしくない数値ですね。
この表のワースト3です。

しかもチタン合金 (Ti-6Al-4V)になるとさらに悪い7.6。
完全にドベです。

熱膨張

最後は膨張率。
膨張すればそれだけカジリ易くなります。

これに関してチタンはいい数値ですね。
ステンは番手によってかなり差がでますね。

はい、以上がカジリ易いボルトの条件です。
やはりチタンはカジリ易い材質なんですね。
チタンを扱う弊社としては残念な結果です💦

とはいえ、モトロックマンのボルトが「噛んだ」とか「かじった」ってほとんど聞いたことがありません。

ここでの話は性質的なことであり、転造してる弊社のボルトはそうそうカジることはありません。

「かじり易い条件」の対策

かじり易い条件がわかったところで、DLC、PVDがなぜカジリに有効なのか?

それは、この表面処理がとにかく 硬い!から。

特にDLCは、最高硬度の表面処理
見て下さい👇

先ほども言いましたが、チタン (Ti-6Al-4V) の硬度は金属のなかでは比較的高いほう。
でも、カジリに有効という数値にはほど遠い。

じゃあ、どれだけの数値があればイイという基準はありませんが、高いにこしたことはありません。

また、硬くなることで、摩擦熱も抑えられ、膨張もしずらくなります。

なお、モトロックマンでもDLCやってます👇

上が従来のDLC。
下が現在開発中の新型のDLC。

新型DLCはさらに硬いですよ~。
もう間もなく販売開始です、乞うご期待!
※この孤児は23年8月の投稿です。現在、新型DLCは販売中です。

また、PVD処理では青やゴールドといった色も可能。

推測ですが、レース用マスターシリンダーの金のピボットピン、これはPVDゴールドを施したものだと思われます。なお、硬度アップの処理はDLC、PVDだけではありません。

どんな処理にしろ硬度が上がれば、かじりを軽減してくれます。

④ かじらないボルトを使う

かじり対策の最後は、かじらないボルトを使うこと。

「えっ!そんなのあるの?」
それがあるんですよ。

「だったら、最初からそれ売れよ!」って話なんですが、それがそうもいかない。

その理由の前に、まずは ”かじらないボルト” の説明から。

その正体はドライ潤滑処理 したボルト !!
上はカワサキファクトリーが使ってるドライ潤滑のボルト。

下はスズキファクトリーのGSX-RR。
見える範囲の黒のボルト全て、ドライ潤滑のボルトになります。
カワサキとスズキで処理の内容が若干異なるため色味が違います。
でも効果はどちらも同じ、グリスアップ効果

表面処理が剥がれないかぎり、カジリはまずありません。

また、ドライ状態にあるためグリスで問題となるホコリや砂の付着もありません。

さらに特筆すべきは、トルク管理ができるということ。

グリスアップと同様に摩擦 (抵抗) が軽減するため、規定トルクではオーバートルクになります。

でもグリスと違うのは、潤滑効果が一定で安定してること。

グリスは、塗る量、塗る場所によって摩擦の低減率が変わります。

対し、ドライ潤滑処理は被膜による潤滑効果なため安定しています。

低減率が常に一定なためトルク管理ができるわけです。

バンバンザイな表面処理なわけですが、それ相応のデメリットがあります。

ズバリ!  超高い!!!

さきほど言いかけた、そうもいかない理由とは、高価すぎるってこと。

この表面処理でボルト何本買えるんだ! ってことなんです。

どこも販売していないのは非現実的な金額になるから。

モトロックマンのドライ潤滑ボルト

ここまで聞いて、ドライ潤滑ボルトが欲しくなったあなた!
モトロックマンが用意しましたよ~。
無地に比べれば高価ですが、それでも現実的な価格帯です。

ちなみに開発に2年かかっております。
なぜ、これほどまで時間がかかったかは、また別の記事で説明いたします。

とりあえずコレがウチの潤滑ボルトです👇

光の加減もあって、実物はこんなにグレーじゃないです。
もっとガンメタです。

でもどうですか?
金属フェチにはたまらない色味じゃないですか?

この処理は、ドライ潤滑コーティング になります。

ファクトリーチームの処理は浸透系の被膜。

対し、モトロックマンの処理は被覆系の被膜になります。

そのため耐久性はファクトリーのものと比べるとどうしても劣ります。

とはいえ剥がれるものではなく、一般的な被覆系被膜よりも十分強固です。

そして最も重要な潤滑効果は、ファクトリーチームのものと何ら変わりがありません。

摩擦の軽減は安定したものになっています。

すでにレースでも使用しております。
現在、JP3の P.MU 7C GALESPEEDチームに使用してもらってます。

長いのでセブンシーさんと呼ばせてもらいますが、セブンシーさんの3連覇にモトロックマンも陰で支えてるわけです。

ちなみにこのボルト、すでに在庫してるのですが、サイトの更新が追い付いてません。
気になる方はお問い合わせください。



今回はここまでになります。
最後までご覧いただきありがとうございます。

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