こんにちは、オートバイのカッコ良さを追求するモトロックマンです。
最近、ヒンジ式のクイックリリースクランプって減ったと思いませんか?
新製品として、あまり見かけませんよね。
なぜか? 理由はズバリ! 壊れるから。
今回は壊れる理由と対処方法についてです。
なぜヒンジ式クランプが危険なのか
理由は、以下の2つの現象がおこるためです。
② 応力腐食割れによる破損
では、順に説明します。
残留応力による変形
これ、説明むずかしいですね。
要は加工後に変形が起きるということです。
なお、この変形は熱処理や曲げ加工だけでなく切削でも発生します。
これが実例です⇩
隙間があるのわかりますか?
クランプが楕円になってるからです。もちろん、NCプログラムでは真円の指示をしています。
変形を見込んで楕円で削ればイイのですが、ハッキリ言って無理です。
ちなみに、この程度では問題ありません。装着は可能、特に弊害もありません。
写真よりも大きな隙間の場合は要注意!
楕円の状態で締め付けるため局部的に圧力がかかります。フロントフォークを圧迫して、運動の妨げになる場合があります。
応力腐食割れによる破損
常に引っ張りの力が加わっていることで割れが起こる現象です。
こちらも細かいことはググってください。
この現象が厄介なのが、すぐに発生しないことです。発生に3か月~半年以上かかります。
時間差があるのは環境の違いにあります。直射日光、雨風が強い状況ほど早く症状がでます。
上図のような構造の場合、矢印部に応力が集中し破損します。
こういった現象には理由があります。
理由がわかれば対応は可能になります。
対処方法
一番の対策方法は、以下の製品を購入すること
応力腐食割れが起こらない製品
では、その見分け方は
② 加工方法を確認
残留応力の変形・応力腐食割れ、どちらも起こり易いのがジュラルミン系です。
従って、ジュラルミン系のヒンジクランプを選ばなければ良いのです。
具体的には、A2017、A2024、A7075 の番手材料です。
話をもどします。
次は加工方法について。
フル切削によるクランプが残留応力の変形を引き起こします。鍛造や鋳造の成型ではあまり起こりにくいです。
特に鍛造は、金属組織が形状に沿った状態になります。そのため残留応力は発生しません。
なお、この金属組織の配列をメタルフロー、もしくはファイバーフローと言います。
下図はボルト頭部のメタルフロー図です。
左は材料をただ切削した状態です。
右が鍛造をほどこした状態です。
鍛造により変形がおこりくくなるだけでなく、強固にもなります。
また、鍛造・鋳造するのにジュラルミンは不向きです。よって鍛造もしくは鋳造の時点で応力腐食割れは起こらないというわけです。
ファクトリーのハンドル
ヒンジ式クランプの製品は材料と加工法を確認すること。
2017・2024・7075 によるフル切削加工品は要注意!
材料も加工も適材適所が大事ですね。
では、最後にファクリー&サテライトチームのハンドルを見ていきましょう。ホントにヒンジが使われていないか確認です。
まずはGPマシンから、
ホンダ RC213V
クランプからハンドルまでのワンピース。
しかも切削! 贅沢です。
ヒンジではありません
ヤマハ YZR-M1
これもワンピース。
芸術的ですね。
スズキ GSX-RR
クランプにハンドルバーを溶接してます。
昔ながらの手法です。
DUCATI デスモセディチ
こちらも切削のワンピース。
流石! ファクトリーマシン
ここまで、ヒンジクランプはありません。
次はSBKの車輛を見ていきましょう。
カワサキレーシング ZX-10RR
まずは、ジョナサン・レイのZX-10RR。
ヒンジ式ではありません。
ワンピース構造です。
GPマシンに負けないクオリティ!
PATA YAMAHA YZF-R1
ちょっとわかりづらいですが、ヒンジではありません。ハンドルバーが差し込み式の2ピース。
DUCATI パニガーレ
ハンドルバーが差し込み式の2ピース。
ヒンジではありません。
次からは日本、JSBマシンになります
ヤマハファクトリー YZF-R1
ワンピースハンドルです。
流石、ヤマハファクトリー。
チームグリーン ZX-10RR
じぇじぇじぇ~!
ついにヒンジ式がみつかってしまいました。
残留応力変形がおこらない工夫をしてるか、許容範囲内か、どっちかですね。
ホンダ CBR1000RR
これまた、ヒンジ式です。
差し込み式ハンドルバーにヒンジ式のクイックリリース。
ヨシムラ GSX-R1000
ハンドルバーのツーピースになっています。
ヒンジ式ではないです・・・と思いきや
SERTと共同で参戦してる世界耐久マシンには、クイックリリースハンドルが装着されてます⇩
実はクイックリリース装着車には共通点があります。耐久にも参戦してる車両なんです。
耐久では、転倒した際のハンドル交換を容易にするためクイックリリースクランプやバーのみ交換できる2ピースハンドルを使います。
ちなみにJSB自体はスプリントレースですが、JSBに参戦してる全てのチームが8耐に参戦します。JSBマシンに耐久パーツが取り付けられてるのは、そのためです。
これに関しては、
”知っておいて損はないレースのカテゴリー” で紹介しています。
ヒンジクランプの使用は少なくなりましたが、完全になくなったわけではありません。特に耐久ではいまだ重宝されているようです。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます
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