【耐摩耗性は硬度に依存する】 耐摩耗性はチタン唯一の弱点?

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【チタンの真実・第7弾:チタンは硬い! でも実は・・・耐摩耗性が悪い】

こんにちは、オートバイのカッコ良さを追求するモトロックマンです。

今回は、”チタンは耐摩耗性に劣る” というテーマです。
チタンボルトがカジリ易い(※) と言われるのも耐摩耗性が原因の1つです。

(※) カジリ易い材質ということであって、転造で出来たチタンボルトであればカジリほとんど起きません。

では、せかっちさんのために先に今回のオチを言うと

チタンは活性金属のため耐摩耗性に劣る
対策には強固で厚い表面処理を施すこと

う~ん、なんのこっちゃ? ですよね(・。・;
では、順にて説明いたします。

摩耗の原因

摩耗のメカニズムはいろいろありますが、一番の要因は 凝着摩耗(ぎょうちゃくまもう)

金属の表面には、微小な凸凹があります。接触した金属に圧力がかかると、互いの凸凹同士が結合します。これを凝着と言います。

凝着した状態で滑り運動 (摩擦) がおこると弱い金属の凸凹がむしりとられ、やせてしまいます。
これを凝着摩耗と言います。

耐摩耗性は硬度に依存する


2つの金属が滑り運動した際に、凝着摩耗で表面がやせるのは弱い金属です。なお、ここで言う「強い」「弱い」は 硬度 のことです。上図では青よりも、赤の硬度が高いわけです。
よって、金属の耐摩耗性は硬度に依存するということです。

チタン合金は高硬度


上図のTi-6Al-4V (α-β合金) の硬度を見てください。この表のなかでは4番目に硬度が高い金属です。
β合金のチタンに限っては1番高い数値です。

硬度が高いということは、耐摩耗性に優れるわけですから、チタン合金の耐摩耗性は良好ということになります。

でも、チタンは他の金属とは勝手が違います。硬度が高くても摩耗に弱い原因があるんです。

チタンが摩耗に弱い原因①

チタン合金が摩耗に弱い1番の理由は、摩擦による不動態皮膜の破壊!

チタンは表面を不動態という強固な皮膜に覆われています。この不動態によりチタンは錆びません。また、硬度が高いのも不動態によるものです。

ですが!
この不動態が破壊されるとチタン合金は一気に脆弱化(ぜいじゃくか)し、凝着摩耗が起こります。

なお、不動態についてはコチラで詳しく紹介しております。
【絶対に錆びないの?】チタンの最大のメリットは錆びないこと
【マグネシウム・アルミ鍛造ホイールの人必見】 チタンボルトは大事なバイクを腐食から守る!!

チタンが摩耗に弱い原因②

チタンが不動態被膜を失うと、なぜ急激に弱くなるのか? それは、チタンがもともと活性金属だからです。

活性金属とは、水素よりもイオン化傾向が高く、水や酸に対して非常に反応しやすい金属のことを指します。簡単に言うと、水や酸と簡単に反応して溶けてしまうわけです。

例えば、カリウム、ナトリウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、そして亜鉛といった金属も活性金属です。これらにはある共通点があるのですが、わかりますか?

そう、これらは薬やサプリメントに含まれる金属元素なのです。どうして飲んでも安全かと言えば、水や胃酸で溶解してしまうからです。

チタンは不動態被膜によって保護されている間は驚くほど強固ですが、その被膜が破壊されると、一気に脆弱な活性金属へと姿を変えてしまうのです。

チタンが摩耗に弱い原因③

では、なぜ強固な不動態が破壊されるのでしょうか?  その原因は、チタンの熱伝導率の低さにあります。

温まりにくく、冷めにくいという性質ため、擦れ合う部分が局所的に高温となり、不動態が破壊されるというわけです。

耐摩耗性をあげる方法

対策はあります。単純に硬度を上げればいいわけです。ただし、擦れ合ってもなくならない強固で厚い表面被膜が必要です。


ボクの経験上、耐摩耗性が必要な部位にチタン合金を使う場合、1000HV以上の硬度処理を施すのが理想的です。装飾も考慮すると、やはりDLC、PVDといった選択になります。

チタンの時計にDLCやPVD処理が施してあるのもこういった理由のためです。

なお上の図は、第一化学工業さんが公開してる表面処理硬度表です。それに各材料の硬度を追加したものです。余談ですが、アルマイトはチタンよりも硬度が低いので、耐摩耗性に対してなんの効果もないことがわかります。

耐摩耗性(硬度)が必要な部位は?


当然ですが耐摩耗性が必要なのは、摩擦がおこるところです。ズバリ、摺動部(しゅうどうぶ)と呼ばれる部位に必要です。

バイクの中でエンジンを除く摺動部はピボット部と呼ばれ、スイングアームピボットとレバーピンになります。

この部位にチタンを使う場合は高硬度の表面処理が必須となります。これらのパーツを購入するときは材質以外に両面処理も気にしたほうがいい。

あとは強いて言うならサスペンションのリンクボルト。この部位にも処理があったほうがより良いですね。

チタンの真実

モトロックマンがお伝えするチタンの真実は全部8つ。是非!ご覧ください。

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はい、今回の記事はここまで。
最後までご覧いただきありがとうございます。

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