【ハンドルもセッティングパーツです】
こんにちは、オートバイのカッコ良さを追求するモトロックマンです。
「ライダーは小柄なほど早い!」って言う人がいますが、実際はそんなことありません。
その証拠がこれ👇
マルク・マルケス 168cm
ケーシー・ストーナー 171cm
バレンティーノ・ロッシ 181cm
ジョアン・ミル 181cm
Repsol Hondaのライダーを何人かピックアップしたものです。
ロッシとペドロサでは、なんと!20cm以上も差があります。
トップライダーにこれだけの身長差があるわけですから、身長による優劣はないですね。
とはいえ、これほどの身長差で同じバイクに乗るって無理があると思いませんか?
それを可能にしてるのが、シート高・ハンドル・ステップによる調整です。
そう、レースチームにとってはハンドル・ステップもサスペンションやキャブレターと同様にセッティングパーツなんです。
ステップがポジションチェンジできるように、有力チームではサイズの違うハンドルが数種類用意されてるんです。
ということで、今回はハンドルの構造について徹底的にご説明いたします。
ハンドルの寸法の見方
まずは、ハンドルのサイズの見方。
ハンドルのサイズを表す項目は以下の通り。
細かく説明するより図にしたほうがわかりやすいかな。
② オフセット
③ クランプ幅
④ 垂れ角度
⑤ ハンドルバーの全長
⑥ ハンドルバーの有効長
ハンドルポジションの変化
90年代までは、垂れ角が強いハンドルを内側に絞って取り付ける傾向がありました。
内側に絞ってる分、ハンドルが近くなってしまいます。
そのため、オフセットを多くとり、ハンドルを遠くした仕様のものが多かったです。
それが2002年にMoto GPがはじまり、ポジションの考えが大きく変わります。
ハンドルはワイドに広げ、ライダーが上から押さえつけるモトクロス的な感じです。
ワイドにした分、今までよりハンドル位置が遠くなるわけです。
大きいライダーは問題ありませんが、そうでないライダーにはオフセットを小さくし、ハンドルを近づける必要があります。
ショートオフセットのハンドルです。
なかにはオフセット0を好むライダーもいます。
ショートオフセットの問題
ショートオフセットには1つ問題があります。
ハンドルの全長が長くなってしまうのです。
オフセットが少なくなるほど、グリップ位置が外になるんです。
クランプとバーの2ピースハンドルの場合、どうしてもバーの掴み代が必要になります。
オフセットが少なくなるほど、掴み位置が手前になり、ハンドルが長くなってしまうわけです。
なかには、それがイイと言う人もいます。
外側で握るほどテコが強くなり、ハンドルが軽くなるからです。
「近くしたいけど、長くなる。」
このバランスが難しいため、有力チームではオフセットの違うハンドルをいくつか用意しています。
ワンピースでデメリット対応
前項の「ショートオフセットによりハンドルが長くなる問題」これはプライベートチームでのこと。
ファクトリーチームはワンピースによってこの問題を解決してしまいます。
ワンピースにすることで、掴み代が必要なくなるからです。
掴み代がなくなれば、ハンドルの全長が長くしなくても済みます。
ホンダが切削、スズキが溶接のハンドルを使っています。
ヤマハは当初、溶接でしたが、現在は切削になっています。
性能的にはどっちも変わりません。
スズキは2022年でレースを撤退してますが、最後まで溶接ハンドルでした。
カテゴリーよるハンドルの違い
スプリントと耐久では、ハンドルへの考え方が違います。
スプリントは転んだら終わり。
そのため、ハンドルに求めるのはポジションだけ。
でも耐久は違います。
まず、耐久はタンクがデカイ!
オフセットが少ないと、タンクに接触するおそれがあります。
なので、好みのポジションに出来ないこともあります。
もう1つ考えなくてはならないのが転倒対策。
転倒後も修復してレースに戻らなくてはなりません。
そのために必要なのが、素早い交換作業のためのクイックリリース機構です。
クイックリリースハンドル
ハンドルのクイックリリースには大きく分けて2つあります。
1つが、これまでも説明してきたクランプとハンドルバーの2ピース式。
もう1つが、ヒンジ式になります。
2ピースのクイックリリース
2ピース仕様の場合、転倒した際にハンドルバーだけの交換で済ませるのが理想。
そのため、クランプには強い材質、ハンドルバーには弱い材質を使います。
またさらに、ハンドルバーは曲がるきっかけとなる穴を設けたり、肉厚を薄くしたりもします。
余談ですが、最近はバーを固定するボルトが緩んでもバーが抜けないように保険が必要になりました。
ヒンジ式クイックリリース
続いてのクイックリリースはヒンジ式。
ヒンジ式は2つのタイプがあります。
1つは、クランプとバーが分割されたタイプ。
この場合、前項の2ピースと同じくバーのみの交換ができ、さらにクランプからの根こそぎ交換も可能です。
もう1つはクランプとハンドルバーが一体になったもの。
セミ・ワンピース仕様ですね。
このタイプは根こそぎ交換になります。
このタイプで悩むのが材質。
ワンピースなので材質を分けることができません。
柔らかいものか、強いものか…。
これは正解がないです。
チームのノウハウによって異なります。
またヒンジ式は、残留応力と応力腐食割れという問題があります。
ヒンジ式の問題点
残留応力とは、加工治具からはずした途端、変形・歪をおこすことです。
真円に削ったはずが、出来上がってみると楕円になるんです。
ワンピースでも起こりえるのですが、ヒンジ式は大きく歪みがでることがあります。
応力腐食割れは、応力が継続した状態のものが腐食すると割れ(クラック)が発生する現象。
ヒンジ式はつなぎ目にピンの部分に常に応力がかかった状態。
腐食すると割れてしまうわけです。
特に2017、2024、7075といった高強度材がヤバイ💦
面白いことに、この現象を知るレース関係者って少ないんです。
この現象って、紫外線や雨水などによる腐食によって起きます。
レース車両は走行のとき以外、外気に触れないからこの現象が起きないんです。
詳しくははこちらの記事で紹介してるので見て下さい👇
【ヒンジ式クイックリリースは危険?】 忍び寄る残留応力と応力腐食割れの恐怖
クランプのグリップ力の考察
クランプの内側も重要です。
段差(溝) があるか、ないか。
これは、段差を設けることであたり面積を減らし、面圧を上げてるわけです。
づまり保持(グリップ) 力を上げるわけです。
でもこれ、程度によってはフロントフォークを攻撃することにもなります。
面圧が強すぎるてサスペンションの動きを妨げるんです。
なのでボルトの軸力を優先する場合は段差をいれないか、もしくは溝の幅を極端に狭くします。
段差のないクランプを見ると、以前は「ふん、素人め」って思ってましたが、もしかしたら1周回って段差がないほうがイイと考えられたものかもしれません(笑)
こういった貫通したタイプも段差と同じ効果になります。
ちなみにこの溝はM6の2点固定の場合です。
カワサキのようにM8の1点固定の場合、溝を設けることはありません。
すり割り部における注意点
ハンドルに限らず割り締めのクランプは、締めこむほどな座面が斜めになます。
ねじ山に対し、座面や穴が斜めになります。
ボルトを締め付けたときにキーキー音がする場合、穴の側面がボルトに接触してるかもしれません。
グリスは直接的な解決とはいえません。
やはり穴を広げるしかないですね。
ちなみにファクトリーチームで、半ねじ部をねじ山より細くしたボルトをみたことがあります。
※説明がわかりづらいので、近いうちに図を用意します
日本文化がハンドルにもたらす影響
さきほど「スプリントと耐久でハンドルの選択がかわる」と説明しましたが、日本はチョット勝手が違うんです。
スプリントでも耐久を考慮したハンドルを使ってるチームが多いんです。
それは鈴鹿8耐があるからです。
JSB1000(国内最高峰のスプリントレース)に参戦してるチームのほとんどが8耐に出てくるんです。
なので、JSB1000の車両はハンドルに関わらず耐久パーツが常時装備されてるんです。
JSB1000(スプリント)でもタイヤ交換のためのクイックリリースが装備されています。
ストリートにおけるハンドルの選択
ここまでの内容は、あくまでレース車両に対しての話なんです。
市販車は、ハンドルにつける具(スイッチやブレーキ等)が大きく融通がきかない。
純正と少しでも位置を変えようもんなら、カウルに接触なんてことになります。
レース車はそのあたりが自由です。
カウルはレース用で、ハンドルストッパーもあってカウルに当たることはありません。
ストリートでもストッパーつければイイわけですが、街中は正直厳しい💦
いいなと思うハンドルが装着できるか、とりあえず試すってこともできません。
よって「自分にあったものを選ぶ」っていうのは難しいですね。
車種別にラインナップしてるものを選ぶのが現実かもしれません。
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今回はここまでになります。
最後までご覧いただきありがとうございます。
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